シダイオレン!

牧師バー店主のアジア・アフリカ旅昔話

 

極めて無益な旅の思ひ出を綴ったブログです。おヒマで死にそうなときにお読みください。くりかえしますが読んでもなんの益もありません。

 

 

第十四話 : 保身の天才、ロクデナシ君!の巻

 

 

みなさん、こにゃにゃちは。

おげんきですか?

悪質なカゼがはやってるようですので、

気をつけましょうね。

 

さて、前回はあやういところで生き延びたロクデナシ君でしたが、、、

ついでに暴露しちゃうけど

じつはインドではもう一度実にヤバイことがあったんだよ。

 

これはもう名前も忘れちゃったけど、

たまたま通りかかった小さな村でのことで

そこでは祭りの真っ盛りだったんだよね。

 

どうしてそんな小さな村に行ったのかなあ。。

 

祭りを見たくてその村に行ったのかなあ。。。

もう、おぼえちゃいないんだけどね。。。

 

まあ、とにかく、

なんの祭りだったかも忘れてしまったけど

(なにしろインドでは祭りがしょっちゅうあるからね)、

見物してるうちに夜になって

祭りはますます盛り上がってきたのです。

 

で、すんごい人混みだから

よく見えるように高いところに登って見てたんですよ。

 

そしたら、下から見上げた男となにげに目があった。

 

そしたら!!!

 

そいつの表情が突然険しくなってさあ。

 

「てめえ、なにガン飛ばしてやがるんだ!!!コるあっ!!!

 

てめえどこの中学だ、このやろー!!!

おれは学習院中だぞ。

 

宮様とご学友なんだぞ!!!」

なんて言うわけ。(うそ)

 

でも、ほんとおっかない顔で

(だいたいインド人の顔っておっかねえんだけどね)

おいらの顔を見ながらこっちの方を指差して

なにやら叫び始めたわけなんだよ。

 

そしたら、群衆の視線がいっせいにおいらに集中!!

 

ああ、またなにやらヤバい予感が。。。

 

今回も彼の言ってることなんかもちろん全然わかりっこないんだけど、

ただ一言だけわかったんだよ。

みんな知ってることばだったからね。

 

それはさあ、

当時のおいらには全然なじみのないことばだったんだけど、

 

そいつは、「クリスチャンだああああっ!」ってしきりに叫んでるわけ。

 

そんときの祭りはいうまでもなく

ヒンズー教の神を祭るものだから、

そこに紛れ込んでいる

明らかにインド人でない異教徒の男(おいらだけど)をみて、

 

邪教のヤカラ、クリスチャンだと思ったんだろうね。

 

つまり彼はこう言ったのだ。(全部想像)

 

「みんな見ろ!

あそこにクリスチャンがまぎれこんでいやがるぞ!

われらの神聖なる祭りを汚す奴だぞ!」

 

 

またもや、一瞬にして群衆は怒り狂い、

神聖な祭りを冒涜し汚す不届きなやから(おいらのこと)を

激しく糾弾し始めたのだった。

 

だけどさあ、

糾弾するのは勝手だけどよお、、、、

当時おいらはクリスチャンでもなんでもない

コチコチの無神論者だったんだぜ。

 

そんなのにクリスチャンなんかと間違われて殺されたんじゃあよお、

たまったもんじゃあねえよ。そうでしょう?

 

(じつはあとでクリスチャンになったんだけどね)

 

そのとき!

 

ああ、そのとき!

 

おれさまの脳裏に突然すばらしい解決策がひらめいたのである。

 

おいらは昔から保身の天才と呼ばれた男である。

なめてもらっちゃあ困る。

 

ザ・キング・オブ・保身(おいらのことだけどよ)は

その時も見事な保身術で危機を免れたのだ。

 

さあ、

どうしたと思います?

 

おいらはとっさに

 

「ノー、ノー!!!ノー・クリスチャン!

アイム・ブディストォォぉっ!!!」

 

(和訳:ばかやろー!

おれはクリスチャンなんかじゃねえ!!!

おれさまは仏教徒だ!

そんなこともわからねえのか、

このインド人のスットコドッコイめが!)

 

って

叫んだんだよ。

 

もちろんおいらは仏教徒なんかじゃねえよ

なにしろ無神論者だったんだからね

 

だけどさあ、

なんたって、命がかかってんだからさあ、

保身のためならそんなことはどうでもいいではないか。

 

節操がないと責めるなら責めよ、

裁きたくば裁け!

 

私は生きたかったのだ、

生きて命の尊さを満喫したかったのだ、

一匹の蟻に健気な命を見たかったのだ、

 

ああ、生きとし生けるものよ!

 

ってなわけで、

保身の天才はその名も知らぬ小さな村を無事に後にしたのだった。

 

 

あ~~~~あ、あぶねえ、あぶねえ。

冗談じゃあねえよ、バカヤロー!

 

クリスチャンなんかとまちがえられて

殺されてたまっかよ!

 

 

なんて、ずっとあとでホントにクリスチャンになるとは

お釈迦様でもわかるめえ! 

 

ってクリスチャンなんだけどよ

 

ごめんね、お釈迦様

 

 

さて、前回、

 

インドのオールドデリーで、

盗っ人ヤローを思わずぶんなぐってしまった

正義のロクデナシ君!

 

この盗っ人インド人めが、盗っ人たけだけしくも

なまいきにでかいナイフをとりだして、、、

 

 

 

あ、あ~~~~~、あ、あああ~~~~~~~っ!!!!

(うるせえっ!って?)

 

 

 

 

 

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第十二話 : ヤバいぞ!ロクデナシ君(その2)、の巻

 

ーーー$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$$ーーー

 

 

 

 

でもね、聞いて!聞いて!

 

そいつが「このやろー」ってなことを喚きながら

ナイフを上段にふりかぶって飛び掛ってきたとき、

 

 

お、これはいけるかも、

って思ったのは、、、

 

 

ずっと以前に見た「12人の怒れる男」っていうヘンリー・フォンダの映画を

思い出したからなんだよ。

 

 

「そんなとっさの時に映画のことなんか思い出すわけないだろう!

うそばっかり書きやがって!このロクデナシやろーが!!」

(だからはじめっから、ロクデナシって言ってるでしょ!ふんっだ!)

 

なんて思っちゃいけませんよ。

 

 

観た人はおぼえてるだろうけど、

その映画でヘンリー・フォンダが

 

「いいかい、ナイフってえものはな、

振りかぶって使うもんじゃあねえんだ。

下から突き上げるようにして使うんだよ、下からな」

 

って言いながら

下からナイフをビュンッて突き上げてみせたのが

ものすごい迫力で、

はっきり覚えてるんだよ。

 

 

で、そのインド人が、

でっかいナイフだったけど振りかぶってかかってきたのを見て、

 

こいつはあんまりケンカ馴れしてないのかも、って思ったわけです。

 

 

で、やってみたらやっぱりその通り、

この盗人インドヤローまるっきり弱くて、

あっという間にもう一人の日本人と二人で

コテンパンに叩きのめしてしまいましたとさ。

 

メデタシ、メデタシ。

 

 

ざまあみやがれ、

ってんでツバひっかけたりして、

 

「ついでにションベンもひっかけちゃうぞ、

くさいんだぞ!おれのションベン!(自画自賛)

 

 

日本人様に歯向かうとはこの猪口才なインド人盗人ヤローめ!」

 

 

なんて思いつつ、ふと気がついたら。。。

 

 

 

ぎゃあ、あ~~~~あ!ああっ!あああああ~~~~~~~~~っ!!!!

(うるせえっ!っすか?)

 

 

 

知らねえうちにあたりは黒山の人だかり。

 

おれたち二人、

 

何百人ものインド人に完全に囲まれてしまっていることに

そこで初めて気づいたわけ。

 

 

 

ナイフが出た時よりこのときのほうが

もうはるかにこわかったね。

 

ううっ!たまんねっす!

 

 

こりゃあもう真底ヤバイと思ったね。

 

ううっ!

 

も、もうっ、チビリそうっす!

 

チビリバビデブー!!!!っす!

 

 

 

しかも雰囲気は非常に険悪!

 

 

日印親善友好なんて言葉は

あっという間に二千万光年のかなたに飛んでいってしまっていたのね。

 

 

で、まわりを取り囲んでいる群衆が

 

黒目のまわりを、白目ギラッと光らせ、

(ホント!インド人の白目ってギラッとひかるんだよ)

 

口々に、

 

 

「こいつらは外人のくせにインド人をフクロにしやがった!」、

「そうだ、とんでもねえ奴らだ!」

「ぶっ殺してしまえっ!」

「そうだ!そうだっ!」

 

 

 

などという物騒なことを叫び始めたのです。

 

もちろん本当は彼らの言ってることは

一言もわからなかったんだけど、

 

 

実際には彼らの言ってることが全部わかったんだよ。

 

うそじゃねえよ。

そういうことってあるんですね。

 

 

 

それで、

 

これはもうダメだ、

逃げられるわけないし、

 

 

おお、ぼくはここで殺されてしまうのね、

死んでしまうのね、

 

「ああ!おかあさ~~ん!!!

 

と、おとうさ~ん!」(東海林さだお風)

 

などとできない覚悟をしようとしたそのとき!!!

 

 

どうなったと思います?

 

 

(このはなし、つづく)

 

 

 

ご無沙汰してしまいましたが、先日お会いしたある方が、この日記を読んでいてくださることがわかり、感動のあまり再開します。

考えてみればこれもオールド・デリーでのことだな。

あの町ではなんか起きる、っていう感じがするよね。

というわけで、オールド・デリーで起こったヤバい事件のお話です。



第十一話 : ヤバいぞ!ロクデナシ君、(その1)の巻



そのときはたまたま宿で知り合った日本人の奴と

一緒に街を歩いていたんだ。


で、マーケットにさしかかって、
ここのマーケットは活気があってすごく面白いから興奮して歩いていると、、、



突然なんか変な気配っていうか、

なんか後ろから感じて振り返ったんだよ。


ぼくの連れはネパールで買ってきたっていう麻で編んだ
肩からさげる安物のバッグを下げていたんだけど、

ぼくが振り返ると、

なんと!!!


ちょうど一人のインド人が
彼のバッグに手を突っ込んでいるところだった!!!


あ!泥棒!って思って咄嗟のことだったので
よく考えもせずいきなりそいつを殴っちゃったんだ。

そりゃあね、あたくしだっていま思えばいいことじゃないのは

わかりますよ。

でもしょうがないよね、そういう状況では。


ぼくのパンチだからヘニョヘニョパンチだったけど、
それがタイミングよくきまっちゃって
その男は仰向けにひっくり返っちゃった。




いやいやいや、そりゃあね、

あたくしだってね、

人をぶん殴って仰向けにひっくりかえしちゃうのは

いいことじゃないのはわかりますよ。


でもね、殴られてねえで、
よけろよ、バカヤロー、っておもうでしょ?
あなたも。


そしたらそいつが怒りやがって
(これがホントの「盗人たけだけしい」ってやつだね、きっと)


なんか

「ふぎゃ、ぎゃぎゃぎゃ〜〜〜〜」みたいなことを
わめきながら

起き上がりさま!!

懐に手を入れてでっかいナイフを出しやがったんだ。


なんて悪いヤツでしょう。



それがオールド・デリーの夕陽にギラリと光ったとき(朝だったかな)、

こりゃあまずいことになったと思ったね。


ね!?まずいよね!?この状況。



どうします?あなただったら、こんなとき。。。



さあ!

われらのロクデナシ君はどうしたでしょうか!



1 泣いてあやまった

2 彼の非を懇々と諭した

3 すぐ逃げた(得意ワザ!)

4 恐怖のあまりすわりションベンしてバカんなった
   (古今亭志ん生ふう)


さあ、どれでしょう!?

この話、次に続く (その3にね)

 

 

  第十話: ロクデナシ君の閑話休題、の巻

 

インドについて書き始めると、ほんとに

止まらなくなっちゃうね。

いくらでも話したいことが次から次へと

でてくるんだよ。

キリがないからそろそろ次の国へ進まなきゃ。

 

でも、、、もう一つだけインドについて書いておきたいことがあるんだ。

でも、インド関係の本は腐るほどあるんだし、

どこが面白いとか、どこの宿が安いとかいった旅行情報を

書くことは目的じゃないから書かないことにするね。

 

そういうことが知りたい人のためには

もっとすぐれた案内書がたくさん出ているからね。

だから、そういう旅行情報じゃなくて、おいらが経験したことを

近視眼的に書いていくしかない、って思ってるんだ。

 

それはすごく主観的かつ独断的な内容で、

それを読んでくれる人にとって何か意味があるのか、、、、

っていわれたらどう答えていいのかよくわからないけど、

 

でも旅行記なんてどっちにしても主観だからね。

おもしろくてすぐれた旅行記なんて、

みんな独善的で排他的だもんね。

 

で、もう一つ書いておきたかったインドのことだけど、

これはヤバイ類いの話です。

 

ヤバイといってもインド話によくあるドラッグ系のヤバイ話じゃなくて、

危険いっぱいの話っていう意味だから安心してね(って、どこが安心なの?)。

考えてみればこれもオールド・デリーでのことだな。

あの町ではなんか起きる、っていう感じがするよね。

(つづく)

やばい!

もう終わっちゃった。

ごめんね。

次、すぐ載せるからね。

 

 

 

     第九話: 真摯に反省、ロクデナシ君、の巻

今回めっちゃ長いので覚悟して読んでください。

長くてごめんなさい!


さて、やっと話は世界最低食堂に戻るざます。

 

カレーを食っていたのさ。
そしたら、目の前に、ヌ~~ッというかんじで手が差し出されてきたさ。

「ああ、また物乞いだな」
とすぐさま思ったのはそういう経緯があったためなのさ。


その差し出された手を無視して、

「だめ、だめ、おれは甘ちゃんの白人観光客とは違うんだから
 いくら待ってても金は出ないよ、
 あきらめて他をあたりな」と心の中で言いつつ

カレーを食い続けていたんだけど、その手がいつまでたってもひっこめられないんだよね。

「お、結構しつこいな」と思いつつ待ったが相変わらず手はおれの目の前。

そのままいい加減時間がたって
まもなくカレーが食い終わりそうになってきても

まだ手はそのままなんだよ。


でね、
もっと変なのは、その手の持ち主がその間まったくの無言!
だったってことなんだ。

あのおしゃべりのインド人がね。

何にも言わないんだよ。
。。。。。


気になってきたね。

どんな奴だろう、見てみたいな、でも目が合ったらもっとしつこく金をねだられるしな、

としばし心中の葛藤。



でもついに好奇心が勝っちゃった。

で、思わず目を上げて相手の顔を見た。。。



ところが、その瞬間おれは凍りついたね。

「あれ、これはいったい何だろう!????」


目はそこに釘付けになったまま。

そして、、、


「ああ、そうか!!!

 これはこの人の顔なんだぁ。。。」とわかるまでに冗談でなく数秒かかったのは、

大変失礼ないいかただけど、

それが人の顔とは思えない状態であったからで。。。(「北の国から」純の独白風)


やっと気がついたよ、

「ああ、そうか、この人はハンセン氏病なんだ」ってね。


それまでにもすでに多くのハンセン氏病の人は見てきたんだ。
そのファーストコンタクトは汽車に乗っていた時だったよ。


プラットホームなんかない小さな駅に止まると
目の前に木の棒のようなものが次々に差し出されてくるんだよね。

で、「なんじゃ、こりゃあ!!?」(松田優作風)

って、窓から身を乗り出して見ると

それは線路に立った物乞いの人たちが差し伸べている手だったんだよね、これが。


彼らはみなハンセン氏病で手の指を失くしてしまっているから、

その手がまるで一本の棒のように見えるのさ。


で、その人たちの顔を見てみると、
中には鼻のない人、耳のない人なんかがいてね。

そりゃあショッキングな光景だったね。


だけど、それでも同じような人を何度も見ているうちに慣れちゃった。

人はどんなことでもいつかは慣れちゃうんだね。


それに、彼らの傷跡、というか病痕はすでに治ってるようで

乾いてツルツルになっていたよ。


だがしかし、

このオールド・デリーの食堂で会った人は
違ってたね。

失礼な言い方だけど、それがその人の顔であると気づくまでに時間がかかるほど、
その人の病気はひどかった。

「ああ、これは人の顔か。

 ああ、これはおばあさんの顔なんだ。

 ああ、そうか、この人はハンセン氏病なんだ。

 ああ、これがハンセン氏病真っ最中の状態なんだぁ」


という具合に数秒の間に少しずつわかっていったわけさ。
うわあ、この人はハンセン氏病の真っ最中なんだな、ってね。


今まで見た人たちはみんな一応治って傷口も乾いていたからね。

でも、このおばあさんは顔中膿みと血とでぐちゃぐちゃで、
どこが目やら鼻やら口やらわからないくらいだったんだよ。

その後、ぼくの記憶の中で
このおばあさんの姿は随分誇張されてしまっているかもしれないけど、

だけど、その時のおばあさんの顔からは、
血と膿みとがボタボタと垂れてくるようにさえ思えたんだ。


そこまできた時ぼくはいきなり吐いちゃった。

椎名誠さんの「怪しい探検隊」の隊則に

「飲んだら吐くな、吐くなら飲むな」っていうのがあったけど、

ぼくは貧乏な旅行だったんで、

食ったものを吐くなんてもったいないことは

それまで一度もしたことはなかったよ。

けど、そんなこと言ってる余裕なんかなかったね。


いっぺんで胃の中がすっかりからっぽになるくらいの勢いで吐いちゃった。

汚い話でごめんね。


で、吐き終わるとものすごい恐怖に襲われて逃げちゃったんですぅ、わたし。

椅子を蹴散らして必死こいて逃げたね。



そんなバカなことがあるはずないんだけど、

まるで、あのおばあさんがおれを追っかけてきていて、
血と膿みだらけの手でおれの襟髪をつかもうとしている気がして、

ひたすら逃げ続けたよ。少し泣きながらね。


あああ、はずかしい。。。

それに、

考えてみりゃあひどい話だね。

あのおばあさんはぼくになんの危害を加えたわけでもない。


口さえきかなかった。

ただ手を出して助けを求めただけだったのに、


ぼくはその顔を見ただけでゲロを吐き、

ものも言わずに飛び出して逃げて行ったんだからね。


なんて失礼なことをしてしまったんだろう。



もう亡くなってしまったろうけど、


もしもう一度あのおばあさんに会えたら、、、
土下座して謝りたいと思うな。

長くてホントごめんなさい。

いつも読んでくれてありがとう!

 

 

第八話:ロクデナシ君、黄金律を制定する、の巻

 

さて、

インドの物乞い状況はシビアであったと言わざるを得ない

この前、カルカッタ(現在のコルコタ)の街角で見た

アメリカ人偽善クリスチャン

(かどうか、知らねえけどね)

の醜態を筆致鋭く描き出したよね。

 

でもね、ことはかの哀れな

白人サンタ兄ちゃんだけの問題じゃないんだよ

とにかく圧倒的な数のジキコちゃんが

どこの町にも犇めき合っていて、

観光客という「持てる者」(別名カモ)

がやってくるのをてぐすね引いて待ってるのさ

ネギしょってね

だから、

非インド人旅行者は

ひとたび宿から外に出れば、

もう一日中!

数十回、数百回も金をせびられ続けるわけさ。

 

「う~~~~む、

 やべえぞ、これは物乞いに対する接し方を決めておかねば

 てーへんなことになるぞ」

とおいらは思ったね。

で、、、熟考すること約6時間半!

 

ついに出たその結果は!!!

これを、わたしは!

天よ、照覧あれ!!

黄金律!! と呼んではばからないのだ

それは、

一言で言ってしまえばよお

「何があろうとも

ジキコちゃんに対して

ニーゼはびた一文出さねえ!

ただし!!

そのとき自分が何か食い物を持っていて、

しかも相手が本当にひもじそうである場合は

その食い物を分け合って食う」

というものだったのである。(ケチくさいね)

 

いやいや、だいぶ横道にそれちゃったけどよお、

30円のカレーを食っていた

オールド・デリーの世界最低食堂に(おぼえてる?)

話は戻るぜ。

でも今日は戻らないぜ。

この次ね。

ごめんね。

 

 


第七話: またもや逃げろ!ロクデナシ君!の巻



こんにちは!おげんきですか。
ご質問をいただきましたので(めっちゃうれしいです) お答えしますが、「シダイオレン」とは、 マサイ語で、「よい!」とか「おいしい!」つまり 英語で言えば"Good!"という意味だと思います。 いいかげんですみません。
ちなみに、マサイ語では、「こんにちは」を 「蕎麦!」といいます。
(いや、つまり「ソバ!」、というよりも 「ソバィ!」に近いかも)
そうすると、あなたはそれに対して、「エバ!」と答えるのです。
やってみましょう、はい!ご一緒に! 「ソバ!」  「エバ!」
おぼえやすいですね。
これやったらマサイにもてまくります。

第七話: またもや逃げろ!ロクデナシ君!の巻
タイで非常に激しい障害を持った人に出会ったとたん、 おいらは逃げた!
前回、そこまで話したよね。 もう!恥じかきついでに告白しちゃうよ。 実は同じようなことがその数ヶ月くらいあとでまたあったんだ。 また、怖くなって逃げちゃった、ってことがね。。。

このときは、インドだった。 オールド・デリーという町でのことなんだけど、 その時おいらはメシを食っていたんだ。 当時のレートで一食30円くらいのカレーを、 食堂という言葉がもったいないような 世界最低レベルの汚さの掘っ立て小屋のようなところで食っていたのさ。

で、食ってるうちにぼくの目の前にヌッと手がさしだされてきた。 「ははあ、おいでなすったな」とおいらは思った。 物乞いが金をせびりにきたんだということがすぐわかったんだよ。 それくらいにはインド擦れしていたんだろうね。
読者のみなさんは、食堂の中に物乞いが!?って驚くかもしれないけど、
高級レストランはともかく、インドの庶民的掘立小屋式食堂では、 犬だろうと、牛だろうと、にわとりだろうと平気で入ってくるんだから、 物乞いの人だって当然入ってくるよ。 よく言われることだけど、インドでは物乞いの人がものすごく多くて その物乞い活動(ってのも変だけどさ)も非常に激しい。 持てるものは持たざるものに施すのは当たりまえ、ってよりも、 持たざるものが持てる者に施しという善行をさせてやるのだから、 ありがたいと思って金をすぐ出せ、いま出せ、今すぐ出せ、 っていうような態度なのだから、 日本から来たうぶなわれわれはぶったまげちゃうよ。

そうそう、 おいらがインドに着いたばかりのある時こんな光景を見てしまったんだ。
カルカッタの町を朝早く歩いていると、 一人の白人観光客がまあ中の上っていうくらいのホテルから出てきたと思いねえ。
するとその辺にいた子供が彼のところに走りよって「バクシーシ!」 (この言葉が『ほどこせ』という意味であることはもうすっかり有名になってしまったけどね) と呼びかけた。
こころ優しい(と思う)この白人は慈悲に満ちた、というか、 サンタクロースもかくやというばかりの微笑を浮かべながら 財布からいくばくかの金をその子に渡した。 きっとこの男はアメリカ人のクリスチャンだったと思うよ。 「偽善者」っていうことばが僕の頭をよぎったことについては まあ,ここではふれるまい(ふれてるけど)。
そういう雰囲気をプンプンさせていたね、 あのサンタのおっさんは、っていうか兄さんは。
べつにアメリカ人のクリスチャンを悪く言うつもりはないけどね。 ぼくもずっとあとでクリスチャンになっちゃったわけだし。

まあとにかく、 この男が子供に金を渡した瞬間、 それを見ていた周辺の子供たちが、 いや子供たちばかりでなく大人たちも、 いっせいにかの白人の下に殺到し、 口々に「金をよこせ!!!」とわめきたてた。 彼らにしてみればその子にやったのなら 当然俺にもよこさねばならない、 という論理であったのだろうが、 全く予期しない事態にこのあわれな白人観光客はもう顔面蒼白だよ。 恐怖でパニクッてアブラ汗ターラタラだったね。 きっと彼は、「このままいくと殺される!」とでも 思っていたんじゃないかね。
で、おいらが道の反対側から、 「どうするかな、あいつ。。。たすけてやろうかなあ。。」 などと心にもないことをつぶやきつつ傍観していると!!! 「ああ!!やっぱり、やったぁ〜〜〜っ!」

サンタ君は、おれが創造したとおり、 ふところから金をつかみ出すや、 その金を宙にばらまいたぁぁぁっ!!


もう、あとは阿鼻叫喚! 悶絶!地獄百景亡者の戯れ! こどもたち!おとなたちが! 突き飛ばし合い、足を引っ張り合い、 つかみ合い、投げ飛ばし合って、それを拾ってる間に サンタ君はその場を逃げ去るという手段に訴えた。

「バカなやつだなあ。。。 あんなとこで金なんか出しゃあ、 ああなるのは目に見えてるじゃんか! けど、まあ、たしかにあれしか逃れる方法はないだろうな」 とぼくは納得しつつ、 転がってきたコインを2~3枚入手してそこを立ち去ったよ。

合掌

 

 

 

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第6話:逃げろ!ロクデナシ君、の巻

 

バンコクの街を毎日歩きまわっているうちに事件は起きた!

不思議な物音に、ふりかえってみると、、、

そこにいたのは一人の男の人!

 

だけど、、、

そのことに(つまり、彼がひとだと)

気がつくまでに時間がかかったんだよ。

 

時間がかかったのにはもちろんわけがあるさ。

それはその人が異常に背が低かったからなんだよ。

並みの低さじゃないよ、

体つきから彼が大人だってわかるんだけど、

子供よりもずっと小さく見えるんだよ

何らかの病気か障害のために

成長がとまってしまったんだろうなあ。。。

 

彼はそこらを歩きまわってるんだけど、

それにしても、

それにしても!

あまりに背が低い!!!

 

よくみたら

彼には両足がないんだ

冗談いってるわけじゃあねえよ、

本当に両足が根元からきれいにないんだよ。

それでも彼は腹を地べたにすりつけて立ってる。

 

さらに!!

 

見ていて気がついたことには

彼には両手もなかったんだよ、

再び根元からきれいにない。

信じてもらえねえかもしれねえけどよお、

それだけじゃなかったんだ、

ヤツは全盲。。。。。。だった。。

多分生まれつきなんだろうね、

はじめから眼球というものがなかったのかもしれない。

 

これだけ重い障害を持った人が生きてる、

それもただ無為に生きてるんじゃあなくって、

ヤツはそこを行ったりきたり

物乞いをして歩きまわっていたんだよ。

「ちょっと待てよ、でたらめ言いやがって、

足がねえのにどうして歩けるんだよ!」

って言いたいんでしょう?

わかってんだよ

でもね、たしかに歩いてたんだよ。

 

恥ずかしながら告白するとさあ、

おいらはここまで書いたようなことにようやく気がついたとき、

恐ろしくなって逃げちゃったんだ。

なにしろ小心者だからね。

逃げちゃったからはっきりはわからねえんだけんどもよお、

あとから考えるとこういうことなんじゃないか、

つまり彼は腹を地べたにつけた状態で立ってる。

そして腕もないんだから

相当難しいだろうとは思うけど、

反動つけて胴体を振る。

すると胴体の幅の分だけ進む。

次に反対の方向に体を振って

また胴体の幅の分だけ前に進む。

 

自信はねえけど

たぶん、

こんな風にしながら、、、

で、ヤツは口に空きカンをくわえてた、

そこで首を振る、

すると

中に少しだけ入れておいたコインが

チャラい音を出す。

道行く人がその音を聞いて

哀れに思って金を出す、

という仕組みだったのではあるまいか。

なにしろ逃げちゃったんだからよくわからねえけど、

でもこの想像はそんなに外れてはいないと思うな。

だってほかに考えようがねえもん

 

ともあれおいらは逃げた。

ええ、ええ、逃げましたとも

逃げながらもね

怖くてしようがなかったんだよ。

「おいら、なんて情けねえやつなんだ」って思いながら、

実はちょっと泣きながら逃げたんだ。

 

それまでおいらは

自分がまあ、まともな方の人間、というか、

(どこがまともなんだよ!

なんて言わないでね

傷つきやすいんだからあ)

社会的に弱者の立場にある人々に対して

常識的な同情心

(同情心ッていやなことばだな、それにしても)

持っているつもりだった。

それがどうだ、

こんなに重い障害を持っている人の生きざまを見て

感動するどころか、怖くなって逃げちゃうんだからね。

 

なんだか自分の中で大事なものがくずれていく、

っていうか、

もう自分を信用することなんかできないな、

って思いを噛みしめながらどこまでも走って逃げた。

あの時おいらはなにから逃げていたんだろう。。。

あ〜〜〜〜あ。。。。。。。

 

 

第五話: 日本出発!いきなり大ショック!の巻

もともと、アフリカ以外には興味がなかったんだよね。

だから初めは
日本からいきなりアフリカに飛んじゃおうか
と思ったんだ。


 でもね、いくらなんでもいきなりアフリカっていうのは
小心者のおいらにはちょっときついだろうと思われたからね。


 で、香港にちょっと寄ってからタイのバンコクに行ったんだけど。。

そしたらよお、
もうおもしろくておもしろくて興奮の連続だったよ。



 もう、毎日毎日ただひたすらに歩き回ってね、
どこにでも顔を突っ込み何でも食いまくった。


角があると曲がりたくなる、
それが路地だともっと曲がりたくなる、

入っていきたくなる。

男の本能!

そんなかんじ。
 

 生まれて初めての海外旅行だしもう完全に舞い上がってたね。




いま思えば小心者のおいらにしては
随分無鉄砲なことをしたもんだ、

と思うけど、


とにかくおもしろくてしようがなかったんだよね。


 で、


 ある日、事件はおきたのでありました。




 例によって路地という路地をぜんぶ曲がって
興奮しまくって歩いているうちに

次第にわけのわからないところに
迷い込んでいったみたい。

 
 少し旅に慣れてきて調子こいてたんだろうね。


はっと気がつくとあたりには外国人なんか
一人もいなくなっていて、


もちろんいま自分がどのあたりにいるのかも
全くわかりゃあしねえ



やべえかな!? とはおもったけど、



それでも面白えから、かまわず歩き続けていると。。。


いきなり

ちょっとした広場のようなところに出たと
思っておくんなさいよ
(いや、ホントに出たんだけどよ)


 
その周囲を無数の小さな店がかこんでる

っていう、と〜〜〜ってもヘンなところ




でね、店を見ながら歩いていると、、、



なにやら左手の方角から

う〜〜〜ん、なんだろう。。。



金属音?のようなものが聞こえてくる



えっ!?

と思ってそちらの方角に顔を向けた
おいらの目に入ってきたのが



一人の男の人

であると気がつくまでには
少し時間がかかった。

 時間がかかったのにはわけがあるんですよ。

それは。。。






ごめん。

長くなるからつづきは次回ね。
早めに次回を書くからゆるして!

読んでくれてほんとうにありがとう。

じゃあまたね

第四話 アリババ登場か!?の巻

 

そんなわけで日本を出てはや一年あまり、

ようやくアフリカ大陸の土を踏んだよ。

 

そこは、北アフリカはチュニジアの首都、チュニスの港だった。

もうけっこう夜遅かったからすぐに安宿を探してその夜はねたけど、

でも実際は興奮して眠れなかったなあ。。。

なにしろ夢にまで見てきたアフリカの第一夜だからね。

 

で、翌朝、まずツーリスト・インフォメーションに行って

驚いたことがあるんだ。

チュニスって結構大きな街だよ。

しかも観光国だし、りっぱな案内所なんだけど、

驚くべきことには英語がまったく通じないんだよ。

けっこうきれーなねえちゃんで、感じもいいんだけど、

英語を一言も解さないんだからこまったもんだよ。

 

とりあえず地図だけはもらって街をあるきまわってみた。

そしたら旧市街みたいなところはスークとかカスバとかって

呼んでいたかなあ。。

もうまるっきりアリババと40人の盗賊みたいな世界なんだよ。

ほそ~~い道がくねくねと曲がりくねっていて、

両側は家の壁だったり、塀だったりするんだけど、

土でできた高い壁状態だから、

それにはさまれた細い道にいると

自分がどこにいるのか、

方角はどっちなのかなんてまるでわからなくなる。

見晴らしがまるできかないからね。

上を見ても

道とおなじような細い空が曲がりくねってみえるだけ。

 

で、足もとをこどもたちがかけまわっていたりする。

ほんとうにいまにもそのへんから

アリババや盗賊があらわれてきそうだったよ。

 

 

おっと、このままアフリカの話にのめりこんでいきそうになっちゃうけど、

ここにいたるまでのアジアのことも

書いておかなくちゃなあ。。

というわけで、次回はアジアにもどるかもしれません。

アフリカもすごいけど

アジアだってめっちゃくちゃにおもしろかったんだよ。

じゃあまたね。

つづく

 

第三話 : アフリカぁぁぁぁぁっっ!!!の巻

 

そうだったんだよ。

あれがアフリカの灯だったんだ。

 

 

日本を出てから、はや一年。苦節1年!

 

めったに腹一杯メシを食うこともできず、

節約に節約を重ねて、、、

ついにアフリカの灯が見える所までやってきた!

 

吐きそうなゲロをなんとか飲み下して

ここまでやってきたんだあああっ!

 

 

 

「あ、あ、あれが!

あれが!

 

アフリカの灯なのかあぁぁぁっ!!!」

(心の叫び)

 

 

で、どうしたと思います?

 

 

 

「アフリカァァァッ!!!」って、

叫んだとおもうでしょう?

 

ふふっ

 

ところがどっこい、叫ばなかったんだよ〜〜だ。

 

 

でもそれはね、

 

感動が足りなかったからじゃないのよ。

 

その瞬間たしかに!

 

おいらの中になにかがこみ上げてきて、

 

 

それが

ひとかたまりの叫びになって爆発しようとしたその直前に、

 

 

頭の上で何かものすごい音がして

それに気圧されて叫びが堰きとめられてしまったのだった。

(純文学風、いや、そうでもねえ)

 

 

 

それはもう、大音声(だいおんじょう、って読んでね)というか、

大爆音とでも言いましょうか、

とにかくものすごい音だったよ。

 

 

な、な、なんだ!なんだ!

 

いってえ、どうしたってんでえ!

 

えぇい、

 

ええれ、えれっけれえ!

(標準語訳:「おいら、江戸っ子だい!」)

 

 

 

ビックリして見上げたらよお、

 

 

そしたらおいらの目に映ったのは、

 

 

毛むくじゃら!

髭もじゃら!の

それはもう本当に汚ねえ白人の大男!

 

 

その大音声は、なんと、

そいつの叫び声だったんだってえことがようやくわかった。

 

 

 

おいらも日本人としたらかなり背が高いほうだけど、

 

 

この男はでけえのなんのって、

 

そんなおいらよりまだ頭一つ高かった。

 

 

 

それにそいつの身なりの汚ねえことといったらねえんだよ。

 

 

いや、おいらもね、

 

ひとのことなんか言えませんよ、

そんなこったあ、よーくわかっておりまさあ。

 

 

日本を出て一年余りですからね、なにしろ。

 

 

おいらもすでに相当汚くなっていたけど、

奴はそんなものじゃなかったね。

 

 

汚いものには慣れっこになっていたおいらも

 

思わずのけぞりそうなくらい汚いそいつがわめき続けていたことが、

 

 

 

しばらくたってようやく理解できたとき、

 

おいらは思わず彼の目を見つめてしまったよ。

 

 

 

 

やっとわかった。

 

 

そいつは、なんのことはない、ただ

「アフリカァ!、アフリカァァァッ!」

と叫んでたんだ。

 

 

 

「あぁ、そうか!

こいつもアフリカを夢見てここまで来たんだ、

おいらとちょうど一緒にアフリカの灯を見つけて

 

思わずおいらの頭の上から

叫んでいたんだな」

 

 

というようなことが一瞬のうちにわかったとき、

 

そいつも僕がそのことをわかったということがわかったのだ、

ということがぼくにわかった。

(ややこしいね、でもわかるでしょ?)

 

で、

「そうかあ。。。おまえもアフリカを夢見て来たんだなあ」

って思いで

やつの目を見ていた。

 

 

やつもぼくの目をみつめた。

 

 

二人の目が合った。

二人の熱い視線がいやらしくからみあった!(ウソ)

 

 

そのときまだ一言も話してないのに

おれたちはすべてをわかりあえた。

 

 

 

奴のきたならしい目が語った、

「おぉ、おまえもか!」

 

おいらのつぶらなひとみがが語った、

 

「そうだとも!おまえもそうだったのか!

おまえもほんとうにアフリカに来たかったんだなぁ!」

 

 

 

 

お互いを瞬時に理解しあえた二人は、

しっかと抱き合った、

 

 

かと思ったがきたないのでやっぱりやめた。

 

 

(つづく)

 

 

 

第二話「吐いちゃいけねえ、男がすたる!」です。

 

 


さあ、困った。

船はますますゆれる。
それまであんまり船に乗ったことなかったからよくわからないんだけど、
そこらへんのなにかにしがみついていないと海にふりおとされそうで
こわいくらいになってきたよ。
当然、船酔いも激しくなってきて、きたない話でわるいけどゲロがこみあげてくるんだよ。
でも、なにしろ長い間の慢性腹ぺこ状態をやっと脱した久しぶりの満腹状態だから、
吐くのはもったいないし。
ここで吐いたら男じゃないぞ!と自分に言い聞かせつつ必死で耐えた。
ほんとのこと言うと、一度は我慢できずにゲロが口の中まで戻ってきちゃったんだ。
(食事中の人は食べ終わってから読んでね)
それでもついに吐かなかった自分の健闘を称えたい。よくやったぞ、おれ。
どうしたか、っていうと、そのまま飲み下したんだよ。
(ごめん、おれのこと嫌いにならないでね。もうしないから)

なんとか気をまぎらわせようとなるべく遠くを見るようにしてたんだ。
だけどなにしろ真っ暗な中だから見えるのはとおくの船の灯りだけ。
それが近づいてきては、すれ違ってまた遠ざかっていく。
そのくりかえし。

そのうち、また遠くに灯りが見えたんだ。
今度はどんな船かなあ。。

しばらくして、あれっ?って思ったよ。
その灯りがあんまり近づいてこないんだよ。
っていうか、それまでの灯りよりずっとゆっくりなんだ、まるでとまっているかのように。

止まっているから、近づくスピードはこの船のすすむスピードだけ。。。
え?っていうことは?。。。

あれは船の灯りじゃない!?

船の灯りじゃないなら、なんなんだよ!
陸の灯り?

地中海のこの先にある陸っていうと。。。

ア、ア、アフリカ!?
あれ、アフリカの灯りなのかァぁぁっ!?

夢にまで見てきた、あれが、アフリカの灯りなのぉぉぉぉぉぉぉっ!?



極めて無益な旅の思ひ出を綴ったブログです。おヒマなときにお読みください。

さて、まずは第一話:「アフリカに渡る船はゆれたざます、の巻」

 

 

第一話 : アフリカに渡る船はゆれたざます

 

アフリカに渡る船はゆれにゆれたよ。

ふざけんなよ!ってくらい

地中海は内海だし、

ゆれるはずなんかない、と思ってたのにね。

 

出港して間もなく晩メシがでた。

テーブルの上にはパンの入ったバスケットが置いてあった。

ありがてえっ!

なんと!

このパンは食べ放題っぽい!

 

 

日本を出てからもう1年になろうとしていたんだけど、

とにかくカネはねえし、

っていうか、

ケチケチしていなきゃあ

あっという間にカネなんかなくなっちゃうからね

 

この1年というもの、

ハラ一杯になるまで食ったことなんて

ほとんどなかったんだよ。

 

だからさあ、

この「食べ放題」(だとおもわれる)のパンがうれしくって、

もうひたすら食いまくったね。

 

 

もうすでに船がゆれはじめていたせいか、食堂は空いていたよ。

だから、ウエイターも親切で、ガツガツ食いまくっているおれをみて、

おかずもお代わりをもってきてくれたんだ。

これはうれしかったね。

 

 

で、10分後には,日本を出て以来はじめて、っていうくらいの

満腹状態になったよ。

 

やっぱ、ひとは空腹だと気が荒くなるからね。

ひさびさの満腹でおれはすごくやさしい気持ちになってたよ。

 

衣食足って礼節を知る。

うむ、

くるしゅうない、

 

っていうか満腹でくるしかったけど。。。

 

 

食堂のすみをねずみが走り回っていたりしたけど、

「ねずみだって生きているんだ。

さあ、残飯をおあがり!」みたいな

気持ちになってたね。

 

万年空腹状態だった昨日までなら

即座に踏み殺してただろうけどね。

 

 

 

でも、まもなくゆれが激しくなってきた。

一番安い船底の船室はションベン臭いし、ゲロ臭い、

で、とてもじゃないけど

そんなところにはいられない。

デッキに出て風に吹かれていたんだけど、

しだいに冗談じゃないくらいゆれてきたよ。

 

 

「やべえ!どうしよう。

きもちわるくなってきた。

げげぇ!吐きそう!」

 

だけど、1年ぶりに達成した満腹状態なのに、

 

ここで吐いちゃったら元も子もない。

 

ああ!どうしよう!

 

つづく